恒川 光太郎著「夜市」と「秋の牢獄」-異世界に迷い込み

ご存知の通り、本も映画もミステリーやサスペンス、ホラーが大好きである。ただ残念ながら、このジャンルで自分の趣味に合う作家を探すことは難しい。ここから述べるのはあくまで個人的意見である。

トリックだけに重点を置いた推理小説は苦手。たとえば、ページの最初に館の地図がついており、それを確認しながら進めるような小説。元々地理的感覚に弱いため、そう言うのを読み取るのが面倒なのだ。そのトリックが格別秀逸ならば別だが、トリック(謎解き)のみに感動することはあんまりない。

設定のみがサスペンスであるが、リアリティもなく、人間描写も稚拙な、まるでTVゲームを見ているような小説。奥行きがないので全く想像力をかきたてられない。

新しい作家を開拓するときは、人のお勧めや受賞作を参考にして選ぶが、これがほとんど役に立たない。少し前に、「日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作、選考委員満場一致」の触れ込みにつられて読んだ某書。デビュー作?なら仕方ないのかーと思うけれど、斬新な設定、圧倒的な構成力ってそれは言い過ぎ。最初の設定はまずまず面白かったものの、ラストに向かうにつれ尻切れトンボで、作者の目指そうとした世界感も独りよがりというかラノベ臭い(辛口)。期待が大きかった分、ガッカリ度も大きかった。

しかし、「第12回日本ホラー小説大賞受賞作」 恒川 光太郎の「夜市」は素晴らしい作品だった。ちなみに、この日本ホラー大賞受賞作には、瀬名秀明の「パラサイト・イヴ」、貴志祐介の「黒い家」、岩井 志麻子の「ぼっけぇ、きょうてぇ」など秀作が多い。



この作家のデビュー作である。だが、このホラーとファンタジーとが見事に溶け合った作品の完成度は相当に高い。怖いというより物悲しい。この作家は寡作で、まだ3冊しか発表していない。「夜市」もよいけれど、私は最新作の短編集「秋の牢獄」の中の「秋の牢獄」がとても好き。ちょっと前にリプレイもの(タイムスリップや何度も人生を繰り返す)をまとめて紹介したが、これもその中に入る。しかし、何と言っていいのか、こういう切り口を読むのは私は初めてだった。



恒川氏の小説はいずれも読むうちに鮮やかに情景が浮かび上がっていく、そして、読んだ後、不思議な余韻が残る。この「余韻」が残るかどうかが、私は小説の質を決定する大きな要因だと考えている。それは物によって、ものすごい感動であったり、重苦しい印象であったり、爽やかで涼やかな香りだったりするのだけれど。

好みが分かれる作家ではあると思うが、私は超お勧め。次作を心待ちにしている。




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夫と私とトイプードルのノワールとのミニマムな家族。

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